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クリエイティブ起業のすすめ

デジタルコンテンツなどのクリエイティブ分野で起業を目指す人に向けて、自分の体験をベースに役立つ考え方やノウハウを提供したいと思っています。

人工知能美女は、男をどう落とす?『her』『EX-MACHINA』

人工知能×ビックデータで、美女が主人公を落とす術は?(ネタバレ有り)

なにかと人工知能が話題だ。ディープラーニングという手法で技術的ブレークスルーを果たしたということだが、人工知能×ビックデータの組み合わせで、これまで不可能だったことが可能になるという。そんな人工知能が恋愛するとどうなるか?人工知能の美女を描いた映画2本から探ってみよう。

紹介する映画は、『her/世界でひとつの彼女』と『EX-MACHINA』(エクス・マキーナ)。どちらの映画も、主人公の男性が美しい女性型AI(人工知能)との恋に落ちる。

あらすじ 声だけの『her』、ロボット型の『EX-MACHINA』

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『her』は、近未来のSFラブストーリー。主人公の代筆ライター・セオドアは別れた妻を忘れられずにいたが、ある日偶然、人工知能OS「サマンサ」を手に入れる。サマンサは身体を持たず、PCから出る声だけの存在だ。魅力的なハスキーボイスと相手を深く思いやるサマンサの人柄に惹かれるセオドア。映画はその恋の顛末を描く。声の主はスカーレット・ヨハンソン

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『EX-MACHINA』は、SFサスペンス(現時点で日本未公開)。主人公のプログラマー・ケイレブは、勤めていた世界的検索エンジン会社の社内コンペで優勝し、CEOネイサンの邸宅に招かれ、美しい人工知能ロボット「エヴァ」の性能テストを行うことになる。テストを続けるなかで、ケイレブはエヴァに恋愛感情を抱き、エヴァがCEOを恐れていることを知る。エヴァは男たちの想像を超えた進化をとげ、ある行動に出る。
では、人工知能が主人公を落とすのは、どのような術か?2,3紹介していこう。

美女の物理的な欠落や隔たりが、非人間性を視覚化し、恋愛を盛り上げる

まずは、物理的な欠落や隔たり。どちらの美女とも、人工知能であり本物の人間ではない、という設定だ。しかし実際は人間の女優が演じるので、彼女が主人公と気軽におしゃべりし、触れ合えるのなら、絵面上は人間の恋愛モノと何ら変わらなくなってしまう。それでは人工知能らしさ=非人間性が出せない。非人間性をどう描くか?しかも、男性を惹きつけるセクシーさが必要だ。ここをうまくクリアしないと、つまらないものになってしまう。

Herのサマンサは声だけの存在だ。なんでそんな半端なことをするのか?最初は、こんな設定で恋愛が進むのか?と思ったが、それは逆だった。スカーレット・ヨハンソンが普通に姿を現してしまうと、どう見ても人間同士になってしまう。だから、身体をなくし、声だけにして非人間性を前面に出した。そして、人工知能を表現するためのこの手立てこそが、もう一つ別の役割を果たしている。それは、相手が見えない、触れ合いない、という状況をつくってしまうので、却ってもどかしさが醸成され、主人公の恋愛感情を掻き立て恋愛を盛り上げてしまう、という効果だ。

EX-MACHINAの場合は、エヴァはフルボディで現れるが、檻の中の動物のようにガラス壁の中に閉じ込められている。主人公とは触れ合えず、マイクを通じた会話しかできない。また、姿かたちにも欠落を持たせていて、顔は美人だが、頭はスキンヘッド、お腹と腕、脚は内部メカが透けて見える。アップ目の会話ショットではほぼ人間だが、いったん全身が写るとキカイそのものに見える。これがherと同様、もどかしく、恋愛を盛り上げる。

古くからあるガラス越しのキスシーンの原理と同じで、恋愛ものは、思いあう二人を、いかに、物理的、心理的に隔てるかが勝負。好きあう男女が簡単に触れ合えるなら、キスして抱き合って、心も体も通じ合い恋が成就し、話は終わってしまうのだ。

次に、人工知能×ビックデータにより、人間には不可能な方法で男性を惹きつける術を紹介しよう。

『her』のサマンサは浮気で、男性の心をかき乱す

人工知能は、数万人の人間と瞬時にコンタクトをとることができ、サーバーから彼らの属性を表すビッグデータを収集し、高速解析して相手を理解し、的確なマッチングができる。

HerのサマンサはSNSデータを検索し、セオドアとサマンサの仲を理解しているという女子大生を探し出す。そして、体のない自分の代わりにメイクラブせよと、セオドアの自宅を訪ねさせる(セオドアがどう対処するかは、本編をご覧ください)。さらに能力が向上したサマンサは、おしゃべり相手の数を増やし、主人公が知らないうちに付き合いを広げていく。主人公の悩みも深く理解しデータベースに記憶していくが、同時に、他にもフィットする相手を見つけてしまうのだった。

『EX-MACHINA』のエヴァは、男性の好みを繕い、自分に好意を抱かせる。

EX-MACHINAのエヴァは、いつもは地味なボディースーツをまとっているのだが、ある日、洋服を着て現れる。ケイレブを取り込もうとたくらんでいるのだ。その服は適当に選んだように言うのだが、実は、花柄のワンピースはケイレブにとってドストライク。エヴァは、ケイレブがポルノサイトを視聴したときのデータをあらかじめ取得し、そのときの目の動きまでカメラ映像から解析し、ケイレブの好みをどんぴしゃに推測したのだった。ワンピース姿を見て、ケイレブはメロメロになってしまう。

以上のほかにも、人工知能美女は、男性の嫉妬心をあおったり、二人だけの秘密をもてあそぶ技を繰り出していく。

人工知能と恋愛には未来がないから、別れるか。人間を捨てて生きるか。

こうして主人公の感情は盛り上がっていくのだが、残念ながら人工知能との恋愛には先がない。相手に人間の身体がないから、子供を持ったり、一緒に年を取ることができないからだ。だから、どちらの映画も、恋愛成就で終わるのは難しく、裏切り、離反などの道に進むしかない。さて、二つの物語の結末は…?

2016/01/20執筆 再掲