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クリエイティブ起業のすすめ

デジタルコンテンツなどのクリエイティブ分野で起業を目指す人に向けて、自分の体験をベースに役立つ考え方やノウハウを提供したいと思っています。

ドラマの葛藤を生みだすのは「思想の対立」だ!

1.ドラマは思想対立
起業家映画の脚本を書いている。ようやく全体像がぼんやりと見えてきた。
ドラマをもっと深くしたい。ドラマが面白いとはどういうことなのか、改めて考えてみた。

 
その昔、映画を学び始めたころ、脚本の教科書には、ドラマとは「貫通目的と障害が起こす葛藤」と書かれていたが、僕にはピンとこなかった。目的と障害というと、主人公が恋人を救うため竜と戦う、といったイメージで、ハラハラするし頑張れと思うが、それだけだ。主人公の「内的な悩み」が発生せず、深いドラマを感じない。僕の結論は、ドラマとは「思想の対立」であり、それが葛藤を引き起こす、ということだ。

 
辞書を引くと、葛藤とは「心の中に相反する動機・欲求・感情などが存在し、いずれをとるか迷うこと」とある。義理と人情の間で葛藤する、と例文が添えてある。

 
ドラマの場合、主人公の心で相反するのは、生きるための思想や価値観だ。例えば、リスクを背負っても自由に生きたいのか、他人にも自分にも規律を守らせたいのか。保守と革新では、どちらで生きたいか?主人公は、厳しい環境の中で、どの考え方で行動すべきか、人生の選択を迫られ続ける。 

 
この相反する思想AとBが、どちらも魅力的だと、主人公の悩みは深くなって、ドラマは面白くなる。
 

140910思考対立クリエ1

 
2.ビジネス物だと、どんな思想が対立するか?

逆に言うと、面白いドラマを作るには、二つの選び難い思想を作り上げる必要がある。

 
ビジネス映画では、どうなっているだろうか?
ソーシャルネットワークウォール街、ダラスバイヤーズクラブ、フラガールなどを見直した。思想が火花を散らしぶつかるのはクライマックス。ここを中心に、これらの映画を検証してみよう。

 
ソーシャルネットワーク』は、フェイスブックの発案から成長までの実話が元

主人公マークによるフェイスブック成長の陰には、長年の親友エドと、憧れの起業家ショーンの2人がいた。
クライマックスでは、事業をもっと成長させたいマークにとって、堅実路線を主張するエドは邪魔になる。一方ショーンは、成長のための的確なアドバイスをくれたが、今や稼いだ金を派手なパーティや女に散財する困り者だ。

 
マークの心は、二つの間で揺れる。
A 事業成長に貢献してくれた二人を、大切にすべき

B さらなる成長には障害なので、追い出すべき

マークは、B「追い出し」を選び、実行に移す。 
エドには、株の分割契約書にだまし討ちでサインさせ、権利を失わせる。ショーンには、コカインパーティを密告し警察に逮捕させる。

 
マークの決断が正しいかどうかは、映画では示されない。辛いのは、仲間切りの代償として、孤独になることだ。映画のラストは、暗い部屋で一人ぽっちのマークが、かつての彼女のフェースブックを見るのが映し出される。

 
映画の冒頭では、この逆の光景、マークが切られる場面が描かれる。学食で彼女と11分も長話しするシーンで、マークは上流階級へのコンプレックスをさらけだし、同時にハーバードを自慢し彼女を卑下する。そして彼女に絶交される。葛藤の軸は、最初から最後まで、人との繋がりvs仲間切り、である。

 
ウォール街』は、若い証券マンのバドが、成功を夢見て、大投資家ゲッコーに憧れ、取り入る話

バドの前には、もう一人の大人、実の父がいる。倒産危機にある航空会社で働く労働階級の整備士で、組合委員を務めている。この二人の持つ思想が真っ向から対立していて、分かりやすい。

 
A ゲッコー 貪欲に金を稼ぐことは悪いことではない。この活力が国の経       済を発展させる。
B 実の父 企業は、組合員が安心して働けるような経営をするべきだ。

 
道徳的にはBが正しいだろうが、公開された80年代、米国人にとってゲッコーの人間像は魅力的だった。
日本が台頭し、米国経済は勢いがなく自信を無くしていた。ウォール街でゴールドマンサックスの社長がしたのが有名な「貪欲は善だ」のスピーチ。映画の中でマイケル・ダグラスのゲッコーが見事に再現している。

 
実の父は、弱いものの味方のようだが、一概に正しいとは言えない。当時のアメリカは航空会社の数が多過ぎ、何社か淘汰されるべきという社会コンセンサスがあった。また、労働者による過剰な権利主張は企業の力を弱め、倒産のキッカケになるとも言われた。AとBが、甲乙つけがたい社会情勢だったのだ。

 
A「貪欲」をめざし行動してきた主人公は、クライマックスでB「仲間」を取る。ゲッコーを経営陣から追い出し、航空会社を守ったのだ。しかしその方法は、インサイダー取引で逮捕された自身が、ゲッコー関与の証拠を示し司法取引することだった。仲間を取って、かつての師匠を売ったのだ。

 
ちなみに、ビジネス物での「死」は、アクション映画のように銃で撃たれて死ぬことはなく、仲間の密告による逮捕、といった「社会死」の形をとることが多い。

 
フラガール』は、炭鉱村で、東京から来た先生が地元の娘達をフラガールに育てる話

フラガールでは、女性3人が主人公だ。東京からきたダンスの先生。炭鉱村の娘、その母親。それぞれが異なる思想を持ち、三つ巴で反発し合う。
A 母 過去を大切にして生きる。仕事とは、歯を食いしばって働くもの。

B 娘 新しい生きる術に挑戦したい。

C 先生  プロとして踊る。悲しいときも、舞台では笑顔。

 
母親は、古い価値観を引きずる地元民代表。炭鉱に誇りを持ち、裸衣装で腰を振るフラダンスを嫌悪する。
娘は、先のない炭鉱に見切りをつけ、フラダンスに突破口を見出す。こわごわとダンスを習い始める。
先生は、プロダンサーとしての厳しさを持つ。若い生徒の熱意は受け入れるが、古臭い田舎になじめず、母親世代とは対立する。

 
クライマックスでは、母vs先生、先生vs娘、娘vs母の三つの戦いが、カットバックで進行する。父の落盤事故を押して舞台を務めた生徒をかばう先生に、母親が「もう東京に帰れ」と迫る。しかし、母親は、娘の真剣な踊りを目の当たりにし、「歯を食いしばるだけが仕事と思っていた」と軟化。娘たちは、帰京の列車に乗った先生を追いかけ、ホームでフラを踊り「あなたを愛しています」とジェスチャーで伝える。これらで3者が和解し、ラスト、本番ダンスで皆の歓喜が爆発する。
 
 
3.思想の対立は、クライマックスまで2段スライドする

最後に、思想の対立が、冒頭からクライマックスへどう変化するのか、そのプロセスをまとめたい。

 
『ダラス』は、エイズになった主人公がたった一人で、製薬会社とFDA(米国厚生省)の癒着に挑む話。

対立する思想は、次のように進化する。
1幕 
A 自堕落で、他人に責任転嫁する人生
B 困難に、立ち向かう人生 

2~3幕 
A 自分利益のために戦う
B 他人貢献に意義を見出す

 
クライマックスで主人公ロンが女医にいうのは「生き延びた時間を、もっと個人の楽しみに使えばよかった。旅行とか。子供も欲しかった。でも、政府との戦いに使ってしまった」 女医は「それでよかったのよ。あなたの人生には意義があった」と応え、二人は抱き合う。これが決めの一言で、ロンの選択B「他人貢献」を肯定している。

 
ちなみに、葛藤とは、ロンと政府との戦いを指すのではない。上記の葛藤は、主人公の内面にあり、戦いは、これらの思想が行動となって表出したものだ。

 
思想対立のプロセスは、一般に次のようにまとめられる。
 

140910思考対立クリエ2

 
1幕
主人公の環境が変わる。 新しいことを始めたり、新しい街に行ったり、アイデアを得たり。
そこで、新しい人に出会い、生き方Bを教えてもらう。新しいことは、今までのAではうまく行かない。Bでやっていく決意をする。

 
2幕上
Bで何とかやっていこうとするが、今までAでやってきたので簡単ではない。
出会った人の助けもあって、何とかBを半分達成する。

 
2幕下 
Bを半達成したがゆえ、A側のかつての仲間などからの逆襲が本格化する。
主人公をAに戻すべく、あれこれ邪魔をしてくる。主人公は切り抜けながら、Bで生きる決意を深める。

 
3幕 
A側からの最終妨害を受け、主人公は戦い、Bのデメリットも受け入れて、Aから完全に離脱する。

 

 

以上

 2014/09/10執筆 再掲