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クリエイティブ起業のすすめ

デジタルコンテンツなどのクリエイティブ分野で起業を目指す人に向けて、自分の体験をベースに役立つ考え方やノウハウを提供したいと思っています。

「40年成長のしっぺ返し」から脱出しよう

1.成長時代の方法をとるから、経済停滞から抜け出せない

経営の世界に「成功のジレンマ」という言葉がある。成功し大きくなった企業が、環境の激変により新しい問題に直面したとき、過去の成功法則をそのまま当てはめてしまい、却って事態を悪化させることをいう。環境が変わったのだから、行うべきは、過去の法則を捨て変化に即した新しい方法を見出すことだ。

僕が就職した80年代、日本は、米国、EUとともに世界経済の牽引車だった。しかし今や、中国にGDPで追い抜かれ、二大大国・米中に挟まれた存在感のない弱い国に成り下がりつつある。EUは自立の道を探り、ロシアは復権へ突き進んでいるのに、日本は、25年超の経済停滞から抜け出せず、世界の再編から一人置いてきぼりを食らっている。

この停滞の原因は、40年という戦後の長い成長のしっぺ返しなのだ。すべての日本人に成功体験が染みついているから、停滞に陥ったとき、成長時代と同じ方法論をとってしまった。今は人口減少なのだから、違うやり方でなければ効果は出ないのに。

最初にやるべきは、時代を認識し、考え方を切り替える覚悟をすることだ。国レベルだけでなく、企業や個人にとっても同じだ。日本の戦後70年をシンプルに整理し、今後なすべき対応を考えてみたい。

2.日本は、いつ、どのような変化を遂げたのか?

日本社会は、いつ、どのような変化を遂げたのか?人口とGDPの動きから大枠をとらえてみよう。細かなデータや数式は次の回にゆずり、ここでは結論だけ提示する。

下図を見てほしい。総人口のピークは2010年、生産年齢人口(15~64歳の人口・以下、生産人口)のピークは95年ごろ。以降は両者とも減少。特に生産人口の減少が著しいが、それだけ高齢化が進むということだ。もう一つ肝心なのは、出生率や平均寿命は急変しないので、30年ぐらい先の人口推計はほとんど狂わないということ。必ず起きる未来なのだ。

一方GDPは、50~60年代の高度成長期は年9.6%、オイルショックを挟み、70~80年代の安定成長期は年4.7%と成長が40年も続く。68年に西ドイツを抜き、日本はGNPで世界2位となった。80年代は一人当たりGDPがグッと向上した。しかしバブル崩壊後、1.1%とほぼ横ばいが20年続いている。

図を見ていて、日本の転換点は90年代の中頃にある、と僕は思う。それより前が成長時代で、それ以降が成熟時代だ。成長時代は、人口もGDPも右肩上がりの量的拡大を続けたが、成熟期時代は全体のパイが増えず、横ばいか緩やかな減少という状況になった。

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余談だが、ヒットコンテンツにも各時代が持つ価値観が鮮明に映し出されている。例えばアニメでいうと、成長時代の主人公は、『巨人の星』『ドラゴンボール』のように、より強く大きいものに挑戦する。90年代の転換期は『ガンダム』『エヴァンゲリオン』など、戦場から逃げて引きこもり、成熟期は『デスノート』『ライアーゲーム』『カイジ』など、あるゲームルールの中でパイを奪い合う。

昨今の『進撃の巨人』『ガンツ』などは、グローバル社会になったため、日本にいながらにして巨大な敵、米中、東南アジアの国際企業と戦わざるを得ない、悲壮な様相が描かれているように思う。

3.成熟時代の成功ポイントは 小規模、独自価値感、変化スピード、稼ぐ力、海外ネットワーク。

成長が成熟に移行し、成功法則はどう変わるだろうか?僕が考えるポイントをいくつか上げる。

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A 市場: みんな一律成長 → 独自の価値観が共存する多様な社会
多くのセグメント市場が、一律に成長する時代は終わった。人々の関心は、動きのない市場全体でなく自己や近隣に向けられる。結果、市場の細分化が進む。各セグメントは他者との差を明確化しようとするため、独自の価値観を持つに至る。社会全体では、多様な価値観が共存することになる。また、IT技術やファブレス化の進行により、変化スピードが速く、新陳代謝の激しい世の中になる。

B 供給者の規模: 大きくて一貫した組織 → 変化スピードが速い小さな組織が強い
供給側で力を持つのは、長期に一貫した事業を継続して成長した大組織ではなくなり、細分化とスピーディーな環境変化に対応可能な小規模組織。こういった組織は、特定市場に呼応することで、独自の価値観や得意技を持つようになり、時代とともにアメーバ的に変化していく。

C 供給者の能力: 資産規模の大きさが力 → 個人で稼ぐ力を持つ組織が生き残る
変化が激しい社会なので、ビジネスモデルの寿命は短くなる。ひとつのモデルで大きな資産を築いたとしても、一旦逆回転が始まるとあっという間に消耗してしまう。逆に、儲かるビジネスモデルさえ構築できれば、金余り時代、資金の提供者はいくらでもいる。ビジネスモデルの新陳代謝に長けた組織が強い。
個人レベルでいうと、成長時代は組織全体で一つのビジネスモデルを確立し、個人は営業職や研究開発など特定パートに特化していたが、これでは、変化を柔軟に乗り越えられない。小さいチームや個人が、市場発掘から商品づくり、販売までの全プロセスを体験し習熟する方が、変化に耐える力が強い。

D 対海外: 現地工場で日本流 → 海外の同志とのネットワーク
国内市場が横ばいなので、事業拡張には海外進出かインバウンド取込みが重要だ。どの先進国も多様な価値観の社会になり、単一の大きな塊の市場は少なくなる。現地に工場を作り大量生産するよりも、価値観や専門性を共有する各都市の小組織と提携する方が有益だ。ネットワークの規模を保つことで、グローバルな変化に対応し、刺激し合い、助け合い、ビジネスのレベルを上げていける。

4.リーダーは、客観データから起こりうる未来を想像せよ

人は、厳しい未来を察しても簡単には正面から向き合おうとしないし、ましてや考えを変えることもしない。長い低迷が続き、危機的な状況に陥って初めて、我に返る。それまでは、問題の先送りや見て見ぬふりを続ける。危機に立ち向かうには大きなエネルギーが必要だからだ。倒産のようなショッッキングな状況になって初めて時代が変わったことを理解するが、時すでに遅しだ。

リーダーがやるべきことは二つ。ことが起こる前に、未来を想像すること。常に、客観データに注視していれば、その延長線を考えるだけで先を見通すことができる。大掴みするだけなら、それほど難しいことではない。先ほどの人口やGDPのグラフで示した通りだ。そのうえで、自分の周辺で起こりうる問題をリアルに想像し、どんな解決策があり得るかを模索することだ。仲間に未来予想を説明し、新手法に挑戦する方向に引っ張っていかなければならない。

新しい方法は簡単に見つかるわけではない。大切なのは、多少は効果があるからと、旧来の手法をズルズル引き摺らないこと。未来と過去との違いを認識し、新しい方法を試す覚悟をしなければならない。幾つか試しながら、その成否をしっかり判断すれば、正しい方向は必ず見えてくる。

2016/01/10執筆 再掲

『ナイトクローラー』が世界的ヒット!ピカレスク起業家の魅力

ピカレスク起業家の魅力とは?(ネタバレ有り)

「起業で成功したいなら、ヒーローでなく犯罪者から学べ!」起業したての頃、僕が心に刻んでいた一言。『ナイトクローラー』の悪漢(ピカレスク)ぶりを見て思い出した。現実、何のバックも無い一個人が成功するには、犯罪レベルの常識破りが必要なのだ。実際に一線は超えないまでも。

主人公のルーは職にありつけず、パパラッチ映像ビジネスを立上げる。殺人現場を求めて夜のLAをさまよいスクープ映像をものにする。テレビ局に売りつけ、金を得る。次第に倫理を踏み外し…。

ルーは悪人だが、非難する気になれない。むしろ、もっとやれ!と応援したくなる。その魅力はなんだ?起業を考える人の参考になるべく、分析してみる。

魅力No1 起業家にマグマを注ぎ込む、現代の深い闇。湧き上る暗い欲望。

起業には大変なエネルギーが必要だ。起業家も生まれ落ちた時は普通の赤ん坊だが、若い心に何かがマグマを注ぎ込む。それは、社会の歪みだ。社会からのストレスを受けてエネルギーを溜め込み、成長する。大人になり力をつけると、今度はそのエネルギーでビジネスを起こし、世界に復讐する。

戦後、ホンダやソニーの創業者の力の源泉は、敗戦によるショックだったという。大人たちが叩き込んだ軍国主義が一瞬にして民主主義に宗旨替えされ、半生を否定された思いだったそうだ。彼らは重化学工業を進める政府を見限り、新分野の産業を立ち上げ、自力で世界企業に育て上げた。

現代社会では、生死を迫られる問題は少ない。しかし、デジタル化やグローバル化は地球規模の競争と格差を作りだした。民族対立も激化した。新しい歪みの出現だ。復讐の武器も、デジタル、メディア、マネーに変わった。

ジョブズは、移民の父から養子に出されたことを怒りに、全世界に自分を認めさせた。成功後も実父には会わなかったそうだ。孫正義は、出自ゆえに日本での出世の道を見限り、高校で米国に飛び出した。会社が大きくなった後も、常識はずれの展開は、日本を揺さぶり続ける。

クローラーでは、人々の欲望が利用される。格差社会の大衆が見たいのは、成功者が引き摺り降ろされる姿。ルーは視聴率を握り、自分を認めなかった社会を左右する力を手に入れた。

魅力No2 たった一人で、デカい計画を進める。日常は、孤独で禁欲的。

無から事を立ち上げるのに、チームワークは向かない。不明瞭な目的を複数の人間が持ち続けるのは難しいからだ。一人の執念・狂気が持続することでしか達成されない。
 
起業家が世間とつながるのは、恋人か仕事の相棒だけだ。多くて2人。事業を始めた起業家に世間は冷たいが、起業家と理解者との絆は、却って深まる。

ルーにとっては年増の女性プロデューサーだけが唯一の同志。野望を打ち明け、「一緒に上り詰めよう」と誘う。女性は「あなたに払っている大金で十分でしょ」と連れないが、最終的にはルーの映像をことごとく買い入れてくれ、ルーもそれに応える。一方、覚悟の定まらない相棒は、努力もせずに分け前を求める。愛想を尽かしたルーは、「信用できないヤツとは一緒にやれない」と突き放す。

起業家の日常は禁欲的だ。野望の前では、小さな幸せは障害でしかない。友人たちと語らう、恋人と食事を囲む、子供と戯れる。そうした幸せを日常に持つと、蓄積されたマグマが少しづつ流出し、力が抜けてしまう。幸せを遠ざけることでマグマを溜め込むのだ。

孤独を愛するルーの部屋には何もない。暗く殺風景な部屋にあるのはたった一本の鉢植え。水をやり、今日の出来事を話しかける。

魅力No3 計画遂行の行動は、大胆、リスクテイク。人の利用、裏切りも辞さず。

大組織と戦い、ライバルを出抜くには、頑張りだけでは勝てない。常識破りの手、違法ギリギリの手を繰り出すしかない。

番組ヒットを狙う女性プロデューサーはルーにささやく。「被害者は郊外住まいの金持ち白人。犯人はマイノリティーか貧困層。それが理想的」触発されたルーは、映りのいい位置に死体を動かし、襲撃されたばかりの邸宅に忍び込む。あげくには、犯人の集いに警察を呼び出し、銃撃戦を仕掛ける。

リアル社会で、かつて孫正義は、外資と組んで日本企業に対抗したり、強引なADSLキャンペーンを始めたり、力技を連発した。ジョブズも、アップルから追い出されたほど強引かつ自己中心的で、復帰後もその手法は変わらなかった。遠目には偉大な改革者だが、近親者にはクソッたれなのだ。

物語のラスト近く、ルーは成功を目前に相棒と対峙する。障害は排除しなければならない。ルーは真人間になるか、ビジネスを完遂するか?起業家と犯罪者の間には紙一重の差しかない。

5倍回収の世界的ヒット!

映像は、セリフ少なく、ハードボイルド調。独自性に制作者の気合いを感じた。調べてみると、本作は、長く脚本家を務めたダン・ギルロイの55才での監督デビュー作だ(脚本も)。

製作/興収は10億/47億 円($8.5m/$39m)で、5倍回収の世界的ヒット!起業映画のポテンシャルの証明だ!ちなみに、ハリウッドでは低予算といわれるが、日本なら大作規模。日本語は1.3億人、英語はネイティブ4億人、第2言語含めると18億人だから、製作費10倍は当然か。

2015/10/12執筆 再掲

自プロ② 自主コンテンツのキッカケを掴む「インサイダー戦略」

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経験のない個人が、コンテンツ作家になるキッカケ

自分オリジナルの映画やゲームを作って稼ぐようになるには、才能や運が欠かせない。修行のためには芸術大学に入ったり就職しないなど、リスクテイクも必要。だから、大抵の人は諦める。しかし、普通に就職したが、家族持ちになる前にどうしても一度チャレンジしたい、という人がいる。良い方法はないか?
 
難しいのは、最初のきっかけ掴みだ。僕の経験から、次の3ステップを紹介したい。
1.自主製作 → 2.業界キーマンを掴む → 3.チャンスを逃さない
 
僕の場合、モバイルコンテンツやネット起業の分野で、このステップを辿った。映画や出版でも基本ステップは同じだ。山場は、第2ステップ。業界の要ポジションの人を、いかに掴みインサイダーになるかだ。
 

借金で自主製作し、友人の反応から学ぶ

最初の作品は、自己投資で作る。製作会社に脚本や企画書を持込んでも、実績がない若者に資金を出すお人好しはいない。ジレンマは、作ってみないと作り方を学べないし、実績ができないことだ。これを乗り越えるには、自主製作しかない。長年かけて貯金する余裕はないから、親、友人、またはカード会社から借りることになる。300万円なら集まる。崖っぷちの制作だから、自ずと真剣になるだろう。
 
作り方の基礎は、映画制作でもネットサービスでも、本とセミナーで十分学べる。あとは、ビデオカメラやノーパソ片手に実制作あるのみ。映画の場合だと、脚本作成、スタッフ募集、撮影段取りなど、一段階ごとに課題にぶつかるが、乗り越え進むことで、多くが学べる。やらない人とは決定的な差がつく。
 
当然、いきなり凄いものは作れない。それでも、作る過程で自分なりのテーマや表現法を発見するだろう。できたものは、友達に頼んで見てもらい、広く意見を聞こう。言葉に表れない反応もみる。自分の強みと、それに反応してくれる客筋を知ることは、制作者としてとても大切だ。
 

業界キーマンとつき合い、インサイダーになる

最低限の製作経験を積んだら、業界人に会いに行こう。手前でネット販売していても限界がある。目当ての業界にそれなりの規模があるなら、作品とお金をさばく問屋機能を持った会社と人間が存在するはず。それが業界の要だ。映画やゲームならプロデューサー、出版なら編集者、起業なら投資家など。コンテンツで稼ぎたいなら、資金が作品に、作品が売上に変わる大渦に身を投じないと始まらない。
 
もちろん、力を持っている人ほど忙しく、簡単には会ってくれない。ビジネスの付き合いがある人を辿って紹介してもらうとか、企画募集の担当者にヒヤリングを申し込むとか、熱意が必要だ。僕が映画留学してた頃は、電子メール普及前だったので、休みになると、ファックスを打ち電話を掛けまくった。その結果、在米の日系映画5社、日本の映画会社6社とのアポを取り付けた。
 
ゲリラ戦術だが、取材を申し込むという手もある。記事を掲載する媒体は、あらかじめプライベートのWebサイトを立ち上げておく。ユニークな視点で取材と掲載を続けていけば、大物だって会ってくれる。注意したいのは、プロデューサーに会ったとき、企画や作品を押し付けないこと。鼻で笑われ、次がなくなるのがオチだ。
 
やるべきは、付き合いを続けること。漠然と面会を申し込んでもダメ。相手の役に立つことを提案しよう。先ほどの取材というのも、記事やブログでその人の考えを把握したうえで、再整理や発展に役立つような質問を考える。最新の調査レポートを持参するのも手だ。僕が携帯ゲームで起業したときは、キャリアの担当者が求める形態を把握し、自分の強みであるストーリー性と掛合わせて企画を立て、ユーザー調査のレポートを携えて何十回と足を運んだ。やり手担当者の指摘から学ぶことも多かった。
 

新展開や穴埋め募集のチャンスを逃さない。そこにいるべし

月に1回の付き合いでも、新参者にチャンスが廻ってくることは十分にある。プロデューサーは常に複数の案件と製作ラインを抱えているが、制作の滞りが頻繁に起きるからだ。次の二つは典型的なチャンス場。
 
「レギュラーの穴埋め」
製作時期が近付いているのに、レギュラースタッフが病気で倒れ欠員になった。すぐに補充が必要だ。
 
「新展開や新シリーズ」
業界全体にわたる新展開や、プロデューサー個人が新シリーズを始めるとき。デジタル時代の今、変革は数年ごとに起きる。モバイル業界では、2006年、ソーシャル化が一気に進み、2012年、ガラケーの多くがスマホに移行した。今後、ネットフリックスが大変化を起こすだろう。既存スタッフだけでは不足する。
 
廻ってきたチャンスには飛びつこう。ハリウッドの話だが、B級映画を量産していたプロデューサー兼監督のロジャー・コーマンが、急に録音スタッフを補充する必要に迫られた。事務所に出入りしていた大学生に「経験ある?」と声を掛けた。「もちろん。5年もやってますよ」と自信たっぷりに答えたので「じゃあ、頼むよ」に。帰宅後、説明書を必死に読みチャンスをモノにした学生は、後の大監督、フランシス・コッポラだ。このような話は、どの業界でもゴロゴロしている。

 
キッカケ後は、定常のオリジナル路線へ

ひとつのキッカケを定常状態にもっていくには、日頃の準備がものをいう。少しできると思われると、どんどんアウトプットを要求されるからだ。アイデアストックや技術修練が足りないと注文はそこで途絶えてしまう。暇なときはストックと鍛錬に励もう。
 
定常にもっていく鍵は、路線化、シリーズ化だ。相手の要求を満たしながら自分なりのオリジナル路線が確立できると、ビジネスは安定し、質と稼ぎが両立した高みへと昇っていける。

 

2015/10/05執筆 再掲

自プロ① 現代のキャリアを切り拓く「自分PDCA」という方法

やりたい事が分からない20代が増えている
NHKの「若者アンケート」(2015年)によると、「就職活動のときに困ったことは?」の回答1位が「やりたい仕事がわからない51%」だったそうだ。確かに、「やりたいのはコレ!」との確信に至るのは簡単ではない。
 
取材のとき僕がアドバイスするのは、「自分PDCA」という方法だ。次の3ステップを繰返す。
1. 自分の興味や資質を見極め、キーワードに落とし込む。
2. やりたい仕事は、複数試すことで確信を得る。会社以外に個人活動でも試す。
3. 仕事や個人活動では、2年後のゴールを設定し、PDCAを廻す。達成後は次のゴールを模索する。
 
自分の興味や資質を見極め、キーワードに落とし込む
若いうちのやりたい仕事というのは、ゼロから作りだすのではなく、すでに世にある中から選び出すものだ。適正な選択をするために、まずは、自分自身の興味や資質を正しく把握しよう。
 
自分の興味や資質がどんなものかは様々な経験を通して自覚するものだが、特に子供時代を振り返ると、義務や焦りのない状況だからこそ素の自分が分かる。小中学生といえども体験は多岐にわたり、教科だけでも算国英理社・体美音があり、部活、委員会もある。友人との遊び、家庭での手伝いはもっと幅広い。これらの中で、何に夢中になったのか、思いだしてみよう。性格や能力も、同級生と比べることで自分の持ち味を知ったはずだ。僕の場合は、算数、実験、工作、お絵かきが好きで、寝食忘れてのめり込むタイプ。集団の中では、社交が得意でなく重要視もしなかった。
 
こういった振り返りは、就活中ならば誰もが一度ならずやるだろうが、効果的なのは、資質や価値観を短いフレーズに落とし込む事だ。ズバリ言い表すキーワードを見極めることで、頭の中が整理でき、考えやすくなる。僕の場合は、モノづくり、哲学、直観とロジック、自己決定、猪突猛進などで、就活時に至ったのが「アート&ビジネス」というフレーズだった。
 
自己診断だけでは不安なら、分析ツールが参考になる。例えば、エニアグラムというツールがあり、ネット上の90の質問に答えるだけで、次の9つの中から自分の価値観タイプを教えてくれる。20分で済む。
[理想を追求したい/人の役に立ちたい/効率的に成果を出したい/自分らしさを大切にしたい/じっくり探求したい/自分の役割を果たしたい/人生を楽しみたい/周囲に影響を与えたい/穏やかで安定的でいたい]
 
やりたい仕事は、会社と「自プロ」で複数試し、確信を得る
次に考えるべきは、自分の興味や資質は、どういう仕事なら活かせるかだ。具体的には、自動車や家電などのメーカーや販売業、金融や旅行などサービス業のうち、どの業種・業界に興味があるか選ぶことになる。また、企画・営業・専門職など、どの職種に向いているか、という選択もある。今の時代、選択カテゴリーはもう一つある。仕事の形態に関してで、普通の会社員だけでなく、フリーランスNPO・起業・海外勤務といった手がある。
 
これらの選択を的確にやるための奥の手は目当ての業界で実際に働いてみることだが、日本でその機会は限られている。米国だと、インターンシップ制度を利用して半年、一年と試すことができるが、日本では、あっても一日体験的なものだ。だから、新卒時は、本で業界や企業を調べたり、OB訪問したり、親から意見を聞くなどして情報を集め、あとは、頭で想像を膨らませ、なるべくピンと来る会社を選ぶしかない。
 
僕の提案は、その後のことだ。長い人生で複数を試しながら合うものに近づいていく、という方法。ある仕事が合うかどうかは、やってみないと分からない。また、自分の適性を真に理解するには、社会に出て数年かかる。だから、年月を掛け、いくつか試すことで近づくしかないのだ。
 
しかし、頻繁な転職は弊害が大きい。20,30代で2回までが現実的だろう。そこで活用してほしいのが、個人での活動だ。僕は「自分プロジェクト」と呼んでいる。平日昼間は会社の仕事に全力を傾けるが、深夜や週末に仕事以外に興味のある分野を試してみるのだ。例えば、資格の学校に行ったり、NPOに参加する。また、原稿書き、自主製作、週末起業などを試してみる。
 
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仕事や自プロでは、2年後のゴールを設定し、「自分PDCA」を廻す。
「会社」と「自プロ」で試行錯誤しながら成果を上げるために、最初にやるべきは小さなゴールの設定だ。2年間は頑張れそうなゴールを具体的に掲げる。仕事上だけでなく自プロでも同じだ。例えば、納得のいく作品づくり、コンテスト入賞、資格の取得、専門分野でデジタル出版、小起業を軌道に乗せるなど。
 
ゴールの達成には、PDCAの手法が効果的だ。PDCAとは、簡単に言うと、ゴールまでの計画を立て、実行しながら、定期的に成果を見て軌道修正する、という方法だ。全体像は下の図のようになる。小ゴールを設定したあとは、こうすればゴールにたどり着けるという方法論を見出し、次にそれを一定のペースで実行していく。
 
ゴール達成の方法論を見出すには、成功した先人の体験や業界の中心にいる人の考え方を調べ、業界構造と、そこでの評価基準を知る事だ。「資格の取得」「起業」「小説の書き方」なら良い本がいっぱいあるし、レアな業界なら雑誌やWEBでロールモデルを探してみよう。直接取材を申し込むのも手だ。
 
方法論の見当がついたら、その実行だ。まず、年間計画と、それを刻んだ月毎のマイルストーンを定める。次に仲間を集めたりスクールに入ったり活動の環境を整え、週単位の行動パターンを決める。また、成功の基準に近づいているかどうか、月毎に自己評価することも欠かせない。仕事みたいで嫌な気がするかもしれないが、PDCAは物事を達成するための一般的手法であり、仕事にしか使わないのはもったいない。
 
僕の経験上、2年のつもりで始めても、上達して一定の成果が出せるにはトータル5年はかかるものだ。5年続いたということは、それだけ向いているということだし、競争力もついている。ゴールの達成後は、自分の目も肥え社会も変化しているので、それまでは見えなかった新しい地平が見えてくる。だから、次のゴールを違う分野に定めてもよいし、現路線のまま上を狙うのもよいだろう。
 
僕の場合のゴールの変遷をまとめると、広告会社の入社2年目、表現テーマは広告主からという広告の仕事に限界を感じ、映画留学をゴールに定めた。激務のかたわら脚本を書き英語の勉強を進めたが、半年後、簡単には合格できない事を悟った。2、3年は合格目指して頑張ろう。そう決めた時、PR館建設のプレゼンで勝ってしまった。3年掛りの大プロジェクトだ。映画留学を中断し、これを全うすることにゴールを変更した。並行して、自分プロジェクトとして建築士の資格にトライすることにした。3年後、PR館は完成したが、熟考の末、PR館企画を続けるより映画留学の出願再開を決めた。合格し渡米できたのはそれから2年かかり、大学院には3年半在籍した。PR館、留学準備、留学本番が交錯しているが、それぞれ5年づつ掛かった計算だ。
 
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現代のキャリアは、「自分PDCA」で切り拓く
こういった「自分PDCA」のサイクルを5年と仮定すると、職業人生40年の間で、ゴール見直しの機会は7回やってくる。そのうち3回が「大ジャンプ」、4回が「路線継続」というのが平均的だろうか。複雑でスピードの速い現代、人生を一本道で歩む必要はない。
 
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その昔、江戸時代の若者は家業を継ぐしかなく、逆にいうと迷いなくそこに集中できた。戦後の復興期は、貧困にあえぐ庶民に職業を選ぶ余裕はなかった。経済成長時代は40年続いたが、会社任せの受身のキャリア形成で、みながソコソコに出世できた。しかし、現代の日本は、全体が一方向を向いている時代ではない。終身雇用は崩れ、所属する業界が突然消滅してもおかしくない時代でもある。
 
結局、自分の道は自己責任で決めるしかない。道に迷うのは自由の代償だ。「自分PDCA」であらゆる可能性を試し、ベストな道を見出してほしい。

 

以上

 

 2015/09/28執筆 再掲

なぜ、「Japanアニメ」は 「アメコミ映画 」に圧されたのか?

米国サブカルファンは、2層に分かれている。

サンフランに住んで2年、「アニメEXPO」「コミ・コン」に参加し、アメコミ映画の劇場に通い、米国のサブカルファンを生で見てきた。感じるのは、サブカルファンには「アメコミ派」と「日本アニメ派」が存在し、二つはほとんど重なりがないということ。前者は40代男性中心、後者は30代女性が多い。重なりがないので、日本アニメのイベントで40代男性は見かけないし、逆にアメコミ映画に30代女性はいない。

 

どうしてこうなったのか?調べてみると、ファン層の形成に影響を与えたのは「アメコミ→日本アニメ→アメコミ映画」というブームの変遷だった。


                 

 

 

 

80年代の「アメコミバブル」から、1995~2006の「日本アニメブーム」へ

80年代、「アメコミ」誌は読むためというより、「株」のように売買価格の上昇を見込まれて買われるコレクター商品となっていた。一般雑誌はスーパーやキヨスクで売られるが、検閲を嫌うアメコミはコミック専門店で売られた。流通規模は小さく、全米でもたった5000店しかなかった。価格は年々吊り上げられたが、90年代、バブルは崩壊しアメコミ誌はぱったりと売れなくなった。出版社が乱立し、低品質コミックが供給過剰となったためだ。

 

「アメコミ」崩壊の一方、1989年、「AKIRA」のビデオ販売が10万本を突破し、「日本アニメ」への注目が一気に高まった。数年後、1995年からの11年間は「日本アニメ」がブームとなった。
 

まず、1995年に「ドラゴンボール」「セーラームーン」のTV放送が始まり、翌年「攻殻機動隊」がビルボード誌のビデオ販売で1位を記録。僕も、ハリウッドのバージンメガストアで壁一面のビデオパッケージを目撃し感慨深かったのを覚えている。

 

1999年、任天堂のゲーム「ポケモン」がヒット。テレビアニメ化され、一大ブームとなった。映画「ポケモンミューツーの逆襲」が制作され、興行収入は100億円。日本映画として初めて「全米ナンバー1ヒット」となり、年間でも興行成績トップ20に入った。2003年には、映画「千と千尋の神隠し」がアカデミーで長編アニメ部門賞を受賞。

 

しかし、ピークは2006年まで。米国における日本アニメの売上は2587億円をつけたが、その後減少し、2012年は2200億円まで落ち込んだ。原因は、ネット時代を迎え、違法な動画投稿が横行してDVDが売れなくなったから。DVDの売り場面積は減少し、タワーレコードは倒産した。アニメ人気は根強かったが、お金を払って観る人が少なくなり、ビジネスは縮小していった。

 

 

2005以降、アメコミは「1億ドル映画」で反撃!

日本アニメがブームだった90年代後半、アメコミは低迷していた。2大出版社はあきらめず試行錯誤を続け、マーベル社はキャラクターライセンスを、DCコミック社は大人向けコミック路線を模索した。なかなか成果が出せなかったが、ゼロ年代に入り、「アメコミ映画」路線で火が付いた。

 

マーベル社は2000年からの「X-MEN」シリーズ、2002年からの「スパイダーマン」(サム・ライミ監督版)シリーズを当て、その勢いでメリルリンチから500億円を調達した。2008年「アイアンマン」シリーズを、続いて「ハルク」「マイティ・ソー」「キャプテン・アメリカ」をスタート。2012年には200億円を投じ、全キャラクター集合の「アベンジャーズ」を発表。世界興収1500億円の大ヒットとなった。これらの映画を制作したのはディズニーだが、マーベルは2009年、その傘下に入った。

 

快進撃は続き、2012年「アメージング・スパイダーマン」シリーズ、2014年「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を大ヒットさせた。

 

一方、DCコミック社も負けてはいない。1969年、早々とワーナー傘下に入り、バットマンやスーパーマンの映画化を進めていた。90年代はマイケル・キートンジョージ・クルーニー主演の「バットマン」を作ったが、2005年にリブート版(再起動)として、クリスチャン・ベール主演、クリストファー・ノーラン監督「バットマン・ビギンズ」で3部作を開始し、大当たり。2006年からは、スーパーマンのリブート版も始めている。

 

僕もほとんどの作品を見たが、一本の製作費が1億ドル(100億円!)超という怒涛のSFX映画が14年間で20本という物量には、度肝を抜かれた。ビジネスサイズが桁違いだ。日本アニメの場合、一本の制作費は5億円程度で、前出のポケモンも3.5億円。ジブリ映画は投資が大きく、「千と千尋」が20億円、「ポニョ」が34億円と言われるが、公開ペースは2年に一本。アメコミ映画との規模の差は、一本当たりでも業界全体でも、ザックリ5~10倍はある。アイデアや技術では乗越えがたい大きな差だ。

 

ところで、なぜアメコミの映画化が起こったか?推測だが、アメコミ出版社は、日本アニメブームを目の当たりにし「アニメが一大ビジネスになる」ことを確信。ただし、米国ではコミックは子供やオタクのものという認識が根強い。大人一般も巻き込むため、アニメでなくハリウッド連携の実写で行こう!となったのではないか。実際、ポケモン映画はファミリー中心だったが、アメコミ映画は若者グループ客が多い。

 

 

マンガとアニメ界、環太平洋のエコシステム

「アメコミ派」と「日本アニメ派」の年齢差は、アメコミ誌と日本アニメのブームに10年位のズレがあるのが原因だ。性別は、パワー全開での勝負を描くアメコミには男性が多く、繊細な心の機微を描く日本アニメには女性が多いということ。最近はアメコミも女性客取り込みのため、ミスティークやブラックウイドウといった女性キャラに力を入れている。

 

人数・性別を、イベントや映画での観客の姿や入場者数から判断すると、下表のようになる。ただしアプリ購入の市場規模は、利用や購入の割合を考慮すると、母数が2倍だがほぼ拮抗する大きさとなろう。

 

        

 

さて、日米のマンガ・アニメ業界は、太平洋を挟み、長らく成長スパイラルを築いてきた。かつて手塚治虫は「ディズニー映画」を観て驚愕し日本初の長編アニメ「アトム」を作り、現代のジェームズ・キャメロン監督は「ジブリ映画」からインスピレーションを得て「アバター」を製作した。

 

僕も、10代「ヤマト」、20代「スターウオーズ」、30代「UCLA映画」、今「サンフランでアプリ」と変遷をたどっている。日本のコンテンツはアメコミ映画の反撃いらい低迷してるが、この大きな循環を信じると、アプリという形が米国で飛躍する可能性は高い!

 

 

 

[参考図書]
 「結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか?」 2013 板越ジョー
 「日本のアニメは何がすごいのか」 2014 津堅信之
 「萌えるアメリカ」 2006 堀淵清治  

 

以上

 

 2015/01/01執筆 再掲
 

 

 

ドラマの葛藤を生みだすのは「思想の対立」だ!

1.ドラマは思想対立
起業家映画の脚本を書いている。ようやく全体像がぼんやりと見えてきた。
ドラマをもっと深くしたい。ドラマが面白いとはどういうことなのか、改めて考えてみた。

 
その昔、映画を学び始めたころ、脚本の教科書には、ドラマとは「貫通目的と障害が起こす葛藤」と書かれていたが、僕にはピンとこなかった。目的と障害というと、主人公が恋人を救うため竜と戦う、といったイメージで、ハラハラするし頑張れと思うが、それだけだ。主人公の「内的な悩み」が発生せず、深いドラマを感じない。僕の結論は、ドラマとは「思想の対立」であり、それが葛藤を引き起こす、ということだ。

 
辞書を引くと、葛藤とは「心の中に相反する動機・欲求・感情などが存在し、いずれをとるか迷うこと」とある。義理と人情の間で葛藤する、と例文が添えてある。

 
ドラマの場合、主人公の心で相反するのは、生きるための思想や価値観だ。例えば、リスクを背負っても自由に生きたいのか、他人にも自分にも規律を守らせたいのか。保守と革新では、どちらで生きたいか?主人公は、厳しい環境の中で、どの考え方で行動すべきか、人生の選択を迫られ続ける。 

 
この相反する思想AとBが、どちらも魅力的だと、主人公の悩みは深くなって、ドラマは面白くなる。
 

140910思考対立クリエ1

 
2.ビジネス物だと、どんな思想が対立するか?

逆に言うと、面白いドラマを作るには、二つの選び難い思想を作り上げる必要がある。

 
ビジネス映画では、どうなっているだろうか?
ソーシャルネットワークウォール街、ダラスバイヤーズクラブ、フラガールなどを見直した。思想が火花を散らしぶつかるのはクライマックス。ここを中心に、これらの映画を検証してみよう。

 
ソーシャルネットワーク』は、フェイスブックの発案から成長までの実話が元

主人公マークによるフェイスブック成長の陰には、長年の親友エドと、憧れの起業家ショーンの2人がいた。
クライマックスでは、事業をもっと成長させたいマークにとって、堅実路線を主張するエドは邪魔になる。一方ショーンは、成長のための的確なアドバイスをくれたが、今や稼いだ金を派手なパーティや女に散財する困り者だ。

 
マークの心は、二つの間で揺れる。
A 事業成長に貢献してくれた二人を、大切にすべき

B さらなる成長には障害なので、追い出すべき

マークは、B「追い出し」を選び、実行に移す。 
エドには、株の分割契約書にだまし討ちでサインさせ、権利を失わせる。ショーンには、コカインパーティを密告し警察に逮捕させる。

 
マークの決断が正しいかどうかは、映画では示されない。辛いのは、仲間切りの代償として、孤独になることだ。映画のラストは、暗い部屋で一人ぽっちのマークが、かつての彼女のフェースブックを見るのが映し出される。

 
映画の冒頭では、この逆の光景、マークが切られる場面が描かれる。学食で彼女と11分も長話しするシーンで、マークは上流階級へのコンプレックスをさらけだし、同時にハーバードを自慢し彼女を卑下する。そして彼女に絶交される。葛藤の軸は、最初から最後まで、人との繋がりvs仲間切り、である。

 
ウォール街』は、若い証券マンのバドが、成功を夢見て、大投資家ゲッコーに憧れ、取り入る話

バドの前には、もう一人の大人、実の父がいる。倒産危機にある航空会社で働く労働階級の整備士で、組合委員を務めている。この二人の持つ思想が真っ向から対立していて、分かりやすい。

 
A ゲッコー 貪欲に金を稼ぐことは悪いことではない。この活力が国の経       済を発展させる。
B 実の父 企業は、組合員が安心して働けるような経営をするべきだ。

 
道徳的にはBが正しいだろうが、公開された80年代、米国人にとってゲッコーの人間像は魅力的だった。
日本が台頭し、米国経済は勢いがなく自信を無くしていた。ウォール街でゴールドマンサックスの社長がしたのが有名な「貪欲は善だ」のスピーチ。映画の中でマイケル・ダグラスのゲッコーが見事に再現している。

 
実の父は、弱いものの味方のようだが、一概に正しいとは言えない。当時のアメリカは航空会社の数が多過ぎ、何社か淘汰されるべきという社会コンセンサスがあった。また、労働者による過剰な権利主張は企業の力を弱め、倒産のキッカケになるとも言われた。AとBが、甲乙つけがたい社会情勢だったのだ。

 
A「貪欲」をめざし行動してきた主人公は、クライマックスでB「仲間」を取る。ゲッコーを経営陣から追い出し、航空会社を守ったのだ。しかしその方法は、インサイダー取引で逮捕された自身が、ゲッコー関与の証拠を示し司法取引することだった。仲間を取って、かつての師匠を売ったのだ。

 
ちなみに、ビジネス物での「死」は、アクション映画のように銃で撃たれて死ぬことはなく、仲間の密告による逮捕、といった「社会死」の形をとることが多い。

 
フラガール』は、炭鉱村で、東京から来た先生が地元の娘達をフラガールに育てる話

フラガールでは、女性3人が主人公だ。東京からきたダンスの先生。炭鉱村の娘、その母親。それぞれが異なる思想を持ち、三つ巴で反発し合う。
A 母 過去を大切にして生きる。仕事とは、歯を食いしばって働くもの。

B 娘 新しい生きる術に挑戦したい。

C 先生  プロとして踊る。悲しいときも、舞台では笑顔。

 
母親は、古い価値観を引きずる地元民代表。炭鉱に誇りを持ち、裸衣装で腰を振るフラダンスを嫌悪する。
娘は、先のない炭鉱に見切りをつけ、フラダンスに突破口を見出す。こわごわとダンスを習い始める。
先生は、プロダンサーとしての厳しさを持つ。若い生徒の熱意は受け入れるが、古臭い田舎になじめず、母親世代とは対立する。

 
クライマックスでは、母vs先生、先生vs娘、娘vs母の三つの戦いが、カットバックで進行する。父の落盤事故を押して舞台を務めた生徒をかばう先生に、母親が「もう東京に帰れ」と迫る。しかし、母親は、娘の真剣な踊りを目の当たりにし、「歯を食いしばるだけが仕事と思っていた」と軟化。娘たちは、帰京の列車に乗った先生を追いかけ、ホームでフラを踊り「あなたを愛しています」とジェスチャーで伝える。これらで3者が和解し、ラスト、本番ダンスで皆の歓喜が爆発する。
 
 
3.思想の対立は、クライマックスまで2段スライドする

最後に、思想の対立が、冒頭からクライマックスへどう変化するのか、そのプロセスをまとめたい。

 
『ダラス』は、エイズになった主人公がたった一人で、製薬会社とFDA(米国厚生省)の癒着に挑む話。

対立する思想は、次のように進化する。
1幕 
A 自堕落で、他人に責任転嫁する人生
B 困難に、立ち向かう人生 

2~3幕 
A 自分利益のために戦う
B 他人貢献に意義を見出す

 
クライマックスで主人公ロンが女医にいうのは「生き延びた時間を、もっと個人の楽しみに使えばよかった。旅行とか。子供も欲しかった。でも、政府との戦いに使ってしまった」 女医は「それでよかったのよ。あなたの人生には意義があった」と応え、二人は抱き合う。これが決めの一言で、ロンの選択B「他人貢献」を肯定している。

 
ちなみに、葛藤とは、ロンと政府との戦いを指すのではない。上記の葛藤は、主人公の内面にあり、戦いは、これらの思想が行動となって表出したものだ。

 
思想対立のプロセスは、一般に次のようにまとめられる。
 

140910思考対立クリエ2

 
1幕
主人公の環境が変わる。 新しいことを始めたり、新しい街に行ったり、アイデアを得たり。
そこで、新しい人に出会い、生き方Bを教えてもらう。新しいことは、今までのAではうまく行かない。Bでやっていく決意をする。

 
2幕上
Bで何とかやっていこうとするが、今までAでやってきたので簡単ではない。
出会った人の助けもあって、何とかBを半分達成する。

 
2幕下 
Bを半達成したがゆえ、A側のかつての仲間などからの逆襲が本格化する。
主人公をAに戻すべく、あれこれ邪魔をしてくる。主人公は切り抜けながら、Bで生きる決意を深める。

 
3幕 
A側からの最終妨害を受け、主人公は戦い、Bのデメリットも受け入れて、Aから完全に離脱する。

 

 

以上

 2014/09/10執筆 再掲

ネットビジネスを高速回転!「メカニズム分解&定点観測」法

お客の購買行動をメカニズム分解する、という方法論
ネットの世界で、コンテンツや通販サイトを成長させる方法論をひとつ紹介したい。
起業当初、まだ赤字の頃に自分で編み出したのだが、多分、他のネット企業も似たような方法を取っている。デジタルならではの方法論なので、出版業やリアル店舗などアナログビジネスの人に話すと驚かれることが多い。
 
その方法とは、一言でいうと「顧客の購買行動をメカニズム分解し、課題解決を繰り返す」というものだ。当社の原動力のひとつである。
 
繁盛レストランを分解する
ネット上には、たくさんのコンテンツや通販サイトがあふれているが、儲けはランキング上位のサイトに集中するという。上位のサイトは、その他大勢と何が違うのか?そう考え始めたが、ネット上のサイトだとイメージしづらいので、リアル世界で考えてみた。ネットもリアルも、商売の原則は変わらないはずだ。リアルの街で考えると、カフェやレストランがネットのサイトに近い。街にあふれていて、流行っているのはその一部なのだから。そこで、街のレストランの繁盛の理由を分析してみた。
 
僕が良く行くイタリア料理店。料理は確かにおいしい。でも、それだけではない。
薄張グラスの冷えたビールなど、飲み物にも神経が行き届いている。テーブルやカウンターのレイアウトも考えられていて、2人でも家族5人で行っても対応してくれる。入口の飾りつけも、いつも季節のものが飾られているし、席案内などオペレーションもよい。着席すると、すぐおしぼりと今日の小皿が出てくる。デザート選びも楽しみのひとつだ。支払い時、レジの近くにチーズ各種がお土産物として並んでいるのもいい。最初にこの店に入ったのは、通りにお品書きと雑誌の記事が出ていたからだった。
 
以上、お店を評価する要素を整理すると6種になり、下の順に並べられる。各項目は、同じ重みをもつように分解したつもりである。
1 立地 2 店構え 3 席案内、店内インテリア、メニュー 4 メイン料理
5 前菜、スープ、サラダ、デザート、飲み物  6 お土産

 
140903メカニズム クリエ企業
 
こう整理すると、お店を流行らせるには、メイン料理のみに注力するより、店構えや席案内、前菜、飲み物にも力を入れるべきだと分かる。全体のバランスを整えながら、総満足度を高くすることを目指すべきだ。立地は簡単には変えられないが、新しく出店するなら、得意の客層が多いところに出すべきだろう。
 
お客さんが不満足な項目を察知できれば、そこの改善に注力すればよい。逆に、すでに十分満足な項目で完璧を目指しても、報われることは少ない。お客さんの評価を定期取得する工夫も必要だ。
 
ネットビジネスに応用し、各項目の好不調を定点観測する
この購買行動メカニズムをネットにも応用したのが僕の方法論だ。
立地とは、どの街に店を出すかという事で、ネットでいうと、例えばどのポータルサイトに広告を出すか、ということになる。店構えはトップ頁だし、席案内やインテリアはメニュー構成にあたる。
 

140903メカニズムクリエ企業2

 
お客の各項目の満足度は、前項目からの移行率を算出すればよい。ネットの場合、前項目で不満足ならば、お客さんはそのサイトからはいなくなってしまう。次のアクションに何割の人が移行したかが重要だ。
 
140903メカニズムクリエ起業3_2

 
ネットでは、こういった指標をリアルタイムで取得することは難しくない。サイトの必要箇所にフラグを埋め込めばよい。管理画面で数字を見やすくしておくと、日毎でも週毎でも、各項目の好不調が一目でわかる。これを定点観測という。評価指標はKPIとも呼ばれるが、個数を絞り込むことが肝心だ。評価項目が多すぎると、直感的な判断が難しくなる。5~7が適当だろう。不調な項目は、原因を追究し対策を講じ、それを定期的に繰り返す。
 
メカニズムを示すことで、社員による改善が効き始め、業績が右肩上がりに
起業3年目の頃、コンテンツ会という定例会を始めた。各社員に担当コンテンツの改善アイデアを発表してもらう会だ。当初、提案レベルは低かった。こんなコーナーを作りたい、ユーザーに受けると思うなど、個人欲求や憶測からの提案や、新しい媒体に出稿してみたい、理由は広告会社から割安料金を提案されたなど。
 
それでも面白そうなアイデアをいくつか実行した。しかし、結果に結び付くのは、アイデアの面白さではなかった。今そこに対策が必要かどうか、が分かれ目だったのだ。集客が必要なのにコーナー充実に力を注いでも無意味な事は、上のメカニズムを理解すれば当たり前のことだ。頭痛に必要なのは胃薬でなく頭痛薬である。当時はそういった整理ができていなかった。しかも人間は、どうしてもアイデアが面白いかどうかに目が行きがちだ。
 
20代前半の社員は、ロジカルシンキングを学び、思考法はある程度身に付いている。コンテンツを良くしようとする意欲もある。しかし、ビジネスの全体像が把握できない。特にネットビジネスは形がないので難しいのだろう。結果が出ないと、やる気も薄れていく。
 
ここで、結局年季が必要なのかと諦めてはいけない。ビジネスモデルの全体像と構成要素を示せるのは経営者だけなのだから。僕は、詳細かつ簡潔なメカニズム図を整理し、全社員に説明した。定点観測も整備した。それからは、社員のエネルギーがピンポイントに集中され、施策がバンバン奏功し、業績が右肩上がり!になったのだった(本当!?)。
 
この方法は数学的アプローチなので、文化背景にかかわらず効果が出せるはず。そう思って、サンフランのスマホコンテンツにも応用しているが、数字がようやくいい感じで上がってきた。この数学思考の正しさが証明されつつある。
 
◇旧来の「月額コンテンツ」でのメカニズム

月額コンテンツ

 

2014/09/03執筆 再掲