クリエイティブ起業のすすめ

デジタルコンテンツなどのクリエイティブ分野で起業を目指す人に向けて、自分の体験をベースに役立つ考え方やノウハウを提供したいと思っています。

起業家の3世代 「63・76・81生まれ」は、ここが違う!

ドリームゲート社の仕切りで、起業家の卵たちと対談した。若い彼らの話も新鮮だったが、そのあと、ドリームゲートの担当者たちが教えてくれた話も、また面白かった。彼らは、起業応援サイトのスタッフとして、これまで300人以上の起業家に取材しており、今の起業家に関し日本で一番詳しいのではないかと思う。僕が独自に調べたことも合わせ、起業家の世代による特徴を書いてみたい。

 

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今の起業家は3世代に区分できる。生まれ年でいうと、1963、76、81で、現時点ではそれぞれ、51才、38才、33才だ。76生まれの少し上にホリエモンやCAの藤田さんがいるが、ここでは簡単に3世代とする。各世代は、時代を反映した特徴を持っていて、意外とタイプが違う。

 

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63生まれには、楽天の三木谷さん、DeNAの南場さん、ヤフーの井上元社長がいる。僕もここだ。この世代は、バブル真只中に社会に出たため、世の中は年々発展していくという意識が強い。30代での起業が多いが、以来10~20年が経過した今も事業を続けているので、生残った起業家といえる。同時代に起業した人は多いが、ほとんどの人は失敗し、とうの昔に地道な職に戻っている。生残った彼らの出自は、大半が大企業。そこでガツガツと仕事をこなし、大きな成果を上げることで、自分の能力に自信を持った。そして、自由を求め会社を飛び出した。ネットビジネスの波に乗り会社を上場させ、名を遂げた今、彼らは、人格に円熟を帯び、社会貢献を考えるようになっているそうだ。

 

76生まれは、GREEの田中さん、mixiの笠原さん、はてなの近藤さんが有名だ。この世代は、就職が氷河期と呼ばれる時代で、大変に苦労した。何とか大手企業に入った人が半分で、25%はITベンチャーへ、25%はフリーターから出発した。大手に就職できた人でも、会社に人生を委ねるという感覚が薄く、やりたい事をやっていきたい、という気持ちが強いそうだ。お金や成功を求めて、というタイプの起業ではなく、好きな事を追求したら起業になった、という事らしい。だから、事業成長できた人は、状況を見定め、コツコツと努力を重ねるしっかり者が多い。

 

81生まれは、不思議ちゃん。起業という一大決心を、「面白そうだからやっちゃおう」みたいな、サークルのノリで決めてしまうらしい。彼らが社会に出たころは、サイバーエージェントDeNAGREEなど大企業になったITベンチャーも多かった。そういう成功を自分も手っ取り早く成し遂げたいと、新卒時、大手企業に内定をもらっても入社せず、上場ベンチャーに入った。しかし、長くは働かず、起業に踏み切る。起業を3年やってダメだった場合は、仲間内でうまくやっているベンチャーへの役員入社を模索するらしい。それもダメなら普通の就職。

 

今は、投資家の数も多いし、低価格サーバーや共同オフィスにより起業コストは90年代の数分の一まで下がり、格段に起業しやすくなっている。この世代から世に出た人はまだ少ないが、このハードルの低さはどのような淘汰結果をもたらすのだろう?チャンスを活かせる人が多数出るのか、甘やかされ挫ける人が増えるだけなのか?

 

いずれにしても、人生のターニングポイントは、30才と35才の2回。この前後で、起業を決意したり、会社をたたみ普通の就職に戻ったりする。いつの時代も、30代は、大きな分かれ目となるようだ。

 

2014/07/01執筆 再掲

モデルは、天才起業家イーロン・マスク 「アイアンマン」

成功した起業家のモチベーションは?
子供たちと観た「アメージング・スパイダーマン2」「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」が面白かったので、DVDで「アイアンマン2」を見直してみた。

 

アイアンマンの主人公、トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)は、天才発明家にして億万長者だ。ハリウッドには、この手の大金持ち主人公の映画が多く、最近では「華麗なるギャツビー」「ウルフ・オブ・ウオールストリート」があった。主人公たちの職業は、全て起業家である。

 

アイアンマンを観ていて気になったのが、成功した起業家の日常だ。放蕩しているだけでは、エネルギーは満たされない。何かをモチベーションに生きているはずだ。それは何なのか?

 

資金と時間をつぎ込み、やりたい事をやる。半端じゃない。
アイアンマン2に、こんなシーンがある。トニー・スタークのライバル事業家ハマーが、マッドサイエンティストのイワン(ミッキー・ローク)を雇うため、金の力で出獄させる。そして、イワンを交渉のテーブルへ招待するのだが、なんとそのテーブルは、ハマー所有のジェット機格納庫にわざわざ設営されたものなのだ。ハマーは、フレンチを食べ富豪ぶりを見せつけながら、イワンと交渉する。

 

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金持ちとはこういうモノだ、と、この映画を作った人たちは想像したのだろう。つまり、出来合いの高級レストランや高級ホテルを有り難がる人種ではなく、自分一人のために設えた空間で、世界一のコックに腕を振わせ、ようやく満足するレベルということだ。一回の食事のため、自分用レストランや別荘を建てさせるかもしれない。

 

僕には、この粋なジェット機レストランが、斬新な事業イデアに思える。

 

自分が欲しいモノ・サービスを、自分で作る。商品開発そのものだ。
もう一つ、こんなシーンもあった。ライバル・ハマーの会社に優秀なリアクター(原子炉)を作られてしまったトニーが、夜中に起死回生のアイデアを思いつき、試作を始めるシーンだ。床や壁にドリルで穴をあけ、ロボットを使いこなし、邸宅内で陽子加速器をつくりあげ、そのエネルギーを利用し、朝までに、新型リアクターを完成させてしまう。

 

これは、引いて考えると、現実社会において、スティーブ・ジョブズビル・ゲイツがガレージで手作りコンピュータをつくり上げたのと同じではないか。お金とエネルギーをつぎ込んで、自分が欲しいもの(商品)を自分で作る。商品開発そのものだ。

 

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新型リアクターもジェット機レストランも、大金持ちが必要とするものは、庶民にだって役に立つ。起業家たちの“お遊び“は、図らずも”新型商品や新サービスの研究開発“になっているのだ。金稼ぎのプレッシャーがないところで、のびのびと楽しんで作られた商品やサービスは、全く新しい発想の商品になりそうだ。

 

事実、例えば、アップルのiパッドは、音楽好きのジョブズが音楽を手軽に楽しみたいと想い描いたことから開発が始まったそうだ。ソニーウォークマンも、創業者の井深氏が、海外出張の機内でクラッシックを聞きたいと、再生専用カセットプレイヤーを開発させたのが始まりだ。

 

お金持ち起業家が多いアメリカ。まだまだ、画期的?なものが生まれてきそうだ。
グーグルのグーグルグラス、アマゾンのドローン、ステラの電気自動車など、ベンチャー企業の新事業は、発想がどこか漫画チックだ。映画007に出てくる最新スパイグッズのようでもある。起業家が、自分の興味本位にのめり込んで開発したからかもしれない。
 

新規事業の立上げは難しいといわれる。斬新な事業ネタは、マーケティングや市場分析からは生み出されないからだ。個人的な欲求やのめり込みから新しいものが生み出されるなら、お金持ち起業家が多いアメリカからは、まだまだ、画期的?なものが生まれてきそうだ。

 

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左:アイアンマン2のワンシーン。
中:グーグルグラスを掛けるグーグルの共同創業者セルゲイ・ブリン
右:アマゾンのドローン(宅配無人機)。

 

2014/05/13執筆 再掲

怒りが世を動かす「ダラス・バイヤーズクラブ」

HIV陽性で、余命30日を宣告された男の物語
ダラス・バイヤーズクラブ」を観た。低予算映画ながら、今年のアカデミー賞で、主演男優賞(マシュー・マコナヘイ)と助演男優賞(ジャレッド・レト)を受賞した作品だ。

 

公開前、チラシを見かけた時から気になっていたが、予想にたがわず面白い。サンフランシスコ市内の映画館に行ったが時間が合わず、自宅ケーブルテレビで1回(6ドル位)、日本往復の飛行機内で字幕付きで2回、計3回も観てしまった。

 

物語は、1985年のテキサスで起きた実話がもとになっている。HIV陽性で余命30日を宣告された男が、米国内で未承認だった治療薬をメキシコなどから手に入れ、有料の会員制システムをつくることで、患者たちにさばいた、という話。男は、その後7年間生きるが、ちっぽけな田舎の弱者が、腐敗した権力に立ち向かうという構造は、ハリウッドらしいヒーローモノでもある。
今僕が書いている「起業家の映画」のヒントになることが、いくつもあった。

 

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強烈な主人公のキャラクター
主人公ロンのキャラクターが強烈だ。40代独身の電気工で、トレーラーハウスに住み、工事現場で働く。趣味は、ロデオライドとギャンブル。
一人身をいいことに、追っかけの女のコたちを家に連れ込み、友人のロデオライダーとパーティー三昧。きついウイスキーやマリファナを楽しむような、自堕落で、自由気ままな暮らしを謳歌している。性格は短気で、気に入らないと誰彼かまわず、すぐに噛みつく。人に好かれるタイプではなく、物語の主人公としても観客は共感しづらい。物語の前半までは。

 

そのロンが、HIVに感染し、余命30日を告げられる。最初「オレはゲイじゃないから、そんな病気ありえない」と医者に噛みつくが、体調は悪化する一方。治療薬を求めるロンは、やがて、驚きの事実を知ることになる。米国では、他国では承認されている有効な治療薬が、なぜか承認されていないのだ。ロンは、治療薬を求めメキシコの闇医者を訪ねるが、やがて、その薬を米国内に持ち込み、エイズ患者にさばき稼ぐことを思いつく。 この過程で、ロンは、自分の主治医に悪態をつき、FDA(厚生省のような役所)の集会に怒鳴り込む。

 

のめり込みや怒りが、新しいものを生み出す
面白いのは、ロンの怒りやのめり込みが、意図せずして、FDAと製薬会社の癒着を糾弾し、エイズ患者への治療薬の配布に一役買うこと。
ただし、ロンは決して正義の味方ではない。ゲイを頭から毛嫌いする態度は偏見に満ちているし、会費を払わない患者に薬を無料で与えることはしない。なにより、政府との戦いは、患者たちを助けるためではなく、自分が生き延びるために始めたのだ。
僕が一番おもしろかったのは、この、ロンの利己的な怒りが世の中を動かす、という部分だ。
起業の世界でよく耳にするのだが、人が起業するのは、「お金持ちになりたい」「この事業を成功させたい」という動機が最初からあるのではない、ということだ。最初から起業を狙うのではなく、「これは面白い」という事にのめり込んで行ったり、「なんでダメなんだ?」と、今いる社会に対する怒りから物事を進めていくと、その結果、起業に至る、という事が多いそうだ。自分の経験に照らしてもうなずける話である。自分がやりたい事を追求していくと、古臭い常識や大企業が支配する旧体制などが阻害してくるので、それを打ち破らないと先へ進めなくなってしまうのだ。

 

やってきたことに意味があったのか?
映画後半に、感傷的な名シーンが一つある。ロンを心配し、女医が自宅に訪ねてくる。体調最悪のロンは、女医に抱かれながら気弱にささやく。「こんなに生き長らえることができるんだったなら、旅行とか、もっと人生を楽しむことをやるべきだったかな?国との争いなどせずに」。数少ない味方である女医は、ロンの体を優しくなでながら、「あなたは、意味のある人生を生きているわ」と励ますのだ。
実在の人物、ロン・ウッドルーフは、行きがかり上、政府と対立するようになったが、生前(今から20年前!)、取材に来た脚本家に、「自分の話が映画になるなら、是非観てみたい。やってきたことに意味があったんだと思えるといいな」と語ったそうだ。

 

2014/04/25執筆 再掲

IT業界の「エコシステム」を見習って、映画投資を始めた

アカデミー作品賞のプロデューサーが、ブラッド・ピット

2014年、映画「それでも夜は明ける」でアカデミー作品賞を受け取ったのは、俳優としてではなく、プロデューサーとしてのブラッド・ピットだった。ピットは、この5年で9本の映画製作に携わっている立派なプロデューサーだ。プロデューサー業に乗りだした俳優はほかにもいて、トム・クルーズクリント・イーストウッドジョージ・クルーニーベン・アフレックマット・デイモンなどが有名だ。ハリウッドでは、なぜ、こういった「俳優の製作兼業」が起こっているのだろう?

 

 

5大スタジオ時代 vs 混沌の時代

さかのぼると、80年代、ヒットを出した監督がプロデューサー業に乗り出す、という事態が相次いだ。当時活躍していたのは、コッポラ、ルーカス、スピルバーグなど若い個性派監督で、彼らは、30代で「ゴッドファーザー」「スターウオーズ」「ジョーズ」などのヒットを飛ばし、稼ぎに稼いだ。そして40代になると、自らの資金を元にプロデューサー業にも乗り出し、若い監督の製作総指揮を務め始めた。

 

そもそも、映画創世記である10年代には、製作や俳優などの機能は未分化で、役割分担の意識は薄かった。例えば、古典名作「国民の創生」をつくったD・W・グリフィスは、俳優、脚本家を経て、監督になった。主演俳優が脚本を書き、監督もするなども日常的な事だった。

 

その後、20~50年代、映画はビックビジネスに成長した。5大スタジオといわれた、フォックス、パラマウントワーナーなどが映画界を支配した。スタジオは、業界秩序を厳格に形成した。自らの権益を確保するために。プロデューサー、監督、俳優といった職種は、明確に分化され、相互の行き来はなくなった。トップの座にいたのが、タイクーンと呼ばれた大物プロデューサーで、強い権限を持ち、自ら企画を立て、監督、俳優を雇った。俳優たちは、スターシステムという専属契約で縛られ、仕事を自由に選ぶことができなくなった。初めてスターシステムを抜け出した俳優は、「北北西に進路を取れ」の名優ケイリー・グラントで、制作会社を設立し配給も手掛けた。50年代のことだ。

 

これら三つの時代の変遷を図解すると、下のようになる。混沌→秩序→混沌、というサイクルをなしている。80年代の混沌がさらに発展し、2010年代、製作兼業は俳優にまで広がった。

 

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映画とITの成功者が、投資する理由

名の売れた俳優が、製作や監督に乗り出すのには、いろんな理由がある。映画制作そのものが好きだったり、映画ビジネスに幅広くかかわりたい、など。

 

僕が、最大の理由だと思うのは、「若い世代=新しい才能」との出会いだ。俳優にとって、名が売れお金が貯まるのは40、50代。大抵その年代では、自分の役柄やスタイルは固まってしまっている。しかし、ヒットする映画を企画するには、新しい時代に沿っていなければならない。それには、「自分が築いたスタイルの殻をぶち破り、新しい感性や技術を取り入れ、掛け合わせる」必要がある。それゆえ俳優は、本来、自分の出演作へつぎ込むべきエネルギーや資金を、貪欲に、若い世代に投資するのだ。

 

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IT業界でも、似たような現象がある。事業を起こし成長させた起業家は、ある段階に来ると、新しい世代との接点を増やす。それまでは、周囲に気を向けず、自らの築城に集中していたのと打って変わってだ。例えば今年、フェイスブックが若いワッツアップ社を買収したように。

 

ITや映画という、流行りすたりの激しい環境では、常に新しいことを取り入れ、変化を遂げないと、生き延びていけない。領域拡大のため、生まれたてのベンチャーに巨額を投資する。自ら、巨体を軋ませ産み出すより、手っ取り早く、若い遺伝子に乗っかる。自らリスクを背負った彼らの緊張感も刺激とする。これこそ、ビジネスのエコシステム(事業の生態系)と呼ぶべきものだろう。

 

 

自分らしく、映画投資を始めてみた

僕も、この半年、30人ほどの若い起業家に取材し、起業分野の拡張を知った。3Dプリンター、ロボトニクス、AI&AR、CtoBtoCなど。世の金余りを背景に、投資家筋も充実している。

 

僕は、僕らしいことをやろうと、IT事業ではなく映画に投資してみることにした。若い制作チームや海外作品に投資することで、自分のスタイルも進化させるのだ。映画は、ベンチャー投資同様にギャンブルなので、分散投資も欠かせない。今年、僕の投資する映画が数本公開されることになる。自分で作る映画はさておき、どこまでヒットしてくれるか、今から楽しみだ。

 

2014/04/20執筆 再掲

業績のブレークスルーを生みだす 「本気ハッタリ」!

覚悟して、ハッタリをかます

「100億円を目指す」 起業まもない頃、ベンチャーキャピタルにそう言い切っていた。正社員は自分達2人だけ。売上は1千万円。それを千倍にできるのか?「自信がない」では投資してくれないが、「必ずできる」と断言しても、最終的にはやってみなければわからない。しかし投資家が見ているのは、起業家の覚悟なのだ。僕は、必ずそこまでやると、本気の覚悟でそう言った。

 

起業家にハッタリは欠かせないが、ハッタリだけで成功できるほど甘くはない。ほとんどが失敗に終わる世界だ。成功する人のハッタリは、失敗する人のと何が違うのか?

 

 

孫正義ジョブズ、ベゾスのハッタリと、その方法論。

孫正義は、創業時、ミカン箱の上でアルバイト社員に向かい、「会社を1兆2兆規模にする!」と大見えを切り、呆れられた。しかしその後、買収をテコにした拡大路線で、24年後には売上1兆円を突破した。

 

ジョブズは、Macを世に出した1984年、「打倒IBM」のCMを発表した。しかし、その翌年にはアップルを追われてしまった。カラフルで流線型のiMacで箱型のIBM的PCを打ち負かす大ヒットを飛ばしたのは、自分を招聘してくれたギル・アメリオを追い落とし復帰した12年後だった。

 

ジェフ・ベゾスは、ウォール街を辞め3人で会社を始めたが、しばらく後、「世界最大の書店を目指す」と仲間に宣言し、社名を世界最大の河川アマゾンと改称した。その後、利益のすべてを設備投資に回すという戦法で、赤字を続けながらも、2011年に全米2位の書店チェーン、バーンズを倒産に追い込んだ。創業17年目のことだ。

 

ハッタリ宣言した彼らの方法論は、上のように、ひとつの戦略で語られることが多い。しかし、その戦略は、頭で考えスッと出てきた訳ではなく、あの手この手の試行錯誤から生み出されたに違いない。なぜなら、彼らの業績グラフは、長い低迷期間を経て、ある時急に右肩上がりを始めるからだ。数年、数十年かけて練り上げられた、精巧な方法論なのだ。

 

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本気のハッタリで自分を追い込み、必死で方法論を見つけ出す

必死で方法論を探し続けていると、珠玉の情報に出会ったり、方法論の芽が見えてきたりするものだ。仲間も増えてくる。

 

僕の場合も、起業当初は、数十人の部下を持つのも初めての経験だし、事業成長のノウハウなど何も持っていなかった。しかし、4年間の失敗の山から、ドラマと女性ユーザーの方法論を掴み、「100恋」「歌詞キュン」というヒットを産み出した。7年目には「恋愛ゲーム」に至り、その後6年間、大勢の社員を引っ張り、ノウハウを積み上げていった。100億に至ったのは15年目だ。

 

起業家は、リスクを恐れず試行錯誤を続け、正解に近づいていくしかない。簡単な事ではない。これを実現するのに最も大切なことは、長期間、全力疾走を続けることだ。本気のハッタリとは、その力の源なのだと思う。起業家は、ハッタリ宣言することで自分を追い込み、パワーに代えていくのだ。

 

逆に、失敗する人は、ハッタリを本気で言ってない。その場限りの言い逃れで、相手にも自分にも嘘をついている。投資家は、ハッタリを言う起業家の目を、冷静に見据える。それが本気の覚悟なのか、ただの言い逃れか、判断するために。仲間とて同じだ。本気でない者には、誰もついてこない。

 

デカいハッタリは、全力集中を持続させる。それが成功の秘訣

目標はデカい方が面白いし、気持ちも固まる。失敗したら人に笑われるから、全力を投じる。失敗しても、自分の限界だと諦めもつくし、過程で得るものも多い。失うのはちっぽけなプライドに過ぎない。恐れず、本気のハッタリ宣言を始めてみよう。必ず、方法の光は見え、味方も現れる。

 

 

2014/03/16執筆 再掲

失敗の山から、光明を見出す 「広げながら絞込む」という方法

映画づくりを始めた。コレぞ!に至る方法は?

去年の夏、14年務めた社長業を退任し、映画づくりに再挑戦することにした。『起業家をテーマにした映画』をつくるべく、久しぶりに脚本づくりに取り掛かった。しかし、考えがまとまらない。あれこれアイデアを膨らませて制作ノートに書きつけたが、考えは拡散する一方で、積み上がっていかないのだ。

 

「コレぞ、というアイデアに至る」には、どうすればいいんだっけ?あがくうちに、広告会社で学んだ成功法則を思い出した。それは、「目一杯広げながら、絞り込め」ということだ。

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オリジナルなコピーを書くために、500本を書き尽くせ

広告会社の新卒研修でのこと。著名なコピーライターである講師が言った。コピーライターがコピーを書くとき、いきなり素晴らしいものを書けるわけではない。最初に出てくるアイデアは、素人のものと大差ない、ありきたりなものだ。10本、30本と書いても、そんなに差は出ない。ただし素人は、50本も書くと行詰る。それ以上は出てこない。

 

プロのコピーライターは、そこからが違う。100本、200本と書いていく。脳みそを絞り、無理やりにでも世界を広げ、書いていく。そうして300本500本と書きつくし、もうこれ以上出ない、となったとき。その最後の一本。これこそが、独創的で、素人には出せないレベルのものになっている、というのだ。

 

ただの力技だ、ともいえる。単に、ひたすら粘り、最後の一滴まで絞り出す根性論であり、カッコのよいものではない。でもそれが、プロの姿勢なのだ。その後広告企画を考える立場になってからは、実際に、できるだけ多くのアプローチを試し、最もイケそうなものを絞り込む、という手順を繰り返した。それで、少しづつ、実績を上げることができたように思う。

 

失敗の山から、いかに早く正しく、光明を見つけるか

この方法論を発展させ、長年、僕の行動原理になっているのは、「広げながら、絞り込む」「ある程度考えたら、やってみて、失敗から学べ」というやり方だ。留学や起業のときも、コンテンツ企画や経営課題に対処するときも、この方法で解決策をひねり出し、決断してきた。

 

方法論をまとめると、次のようなステップになる。
(1) 課題に対するアイデアを、できるだけ多く考える。
     ・本質を掘下げ、構造を捉え分解し、両極端に幅広く考える。
     ・本を読んで世界を広げ、人に話して反応を見る。
(2) その中で、良さそうなものを2,3に絞り込む。
     ・なぜ選んだか、「自分の原則」を短い文章で書く。
(3) その2,3を、実際にやってみる。大抵はうまく行かないが、めげない。
     ・失敗の原因、原則の間違い、を特定し、原則文を修正する。
(4) さらに、実行&方向修正を繰り返す。必ず正しい方法論に行く着くはずだ。

 

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これは、「量質転換」の方法であり、「失敗の山から、光明を見つける」作業である。事を起こす前に十分に考えつくすことは当然だが、人間が想像できることなどたかが知れている。やってみて初めて分かることは多い。肝心なのは、実行前に「原則文」をしっかり書くことだ。失敗後、必ず原則文を修正する。これを繰り返すと、原則は経験に裏打ちされた完成度の高いものになる。短い原則文は、記憶に残り、新たな状況に応用しやすい。

 

失敗の山を無駄に築け、というのではない。漫然と同じ失敗を繰り返していては、成功はおぼつかない。いかに賢く失敗するか、次の成長に結び付けるか、ということが大切だ。ボルテージでは、この考えに基づき、全社員に毎週G-PDCAの発表会を行っている。

 

今回の映画も、さらに広げ、ぼんやりゴールが見えてきた

さて僕は、この半年、一人悶々と、テーマを模索し、ネタを拾い、いろんなキャラクターやあらすじを考えてきた。あらすじは6種類、ノートは7冊にもなった。しかし、コレぞ!に至っていないということは、試行錯誤がまだまだ不十分ということだろう。

 
年明け、日本に帰国した際、もっとネタを拾おうと、精力的に人に会うことにした。起業家の卵たち15人に会い、生の声を聴き、脚本家にもアドバイスをもらいに行った。参考映画を手当たり次第に観た。今、その中から、ようやくゴールが見えてきたところだ。

 

2014/03/01執筆 再掲